
近年、Z世代へのリーチ手段としてSNSの重要性が高まる一方、マスメディア中心だった企業にとって若年層との接点づくりは大きな課題です。本対談では、電子マネー「nanaco」の公式X(旧:Twitter)アカウント運用を担当するセブン・カードサービスの葛西真菜氏をお迎えし、内製(自社)チームと外部パートナーの二人三脚により、Z世代の心を掴むSNS戦略をいかに実現したのか、その舞台裏を語り合いました。
目次
プロフィール
葛西 真菜
株式会社セブン・カードサービスにて電子マネー「nanaco」公式Xアカウントの運用を担当。若年層へのブランド認知拡大に向け、キャラクター「ナナコ」を活用したSNS戦略を推進している。
武内 一矢
株式会社NAVICUS代表取締役。Q&Aコミュニティ運営企業、ディー・エヌ・エーでのマーケティング職を経て2018年にNAVICUSを設立。SNS/コミュニティマーケティング分野で累計300社以上の企業を支援。
NAVICUSとの取り組みはご紹介からスタート
NAVICUS 武内(以下、武内)
本日はよろしくお願いします!早速ですが、nanaco公式Xの運用において、NAVICUSがお手伝いすることになった経緯からお聞かせください。
セブン・カードサービス 葛西(以下、葛西)
よろしくお願いします。もともと弊社のnanacoアカウント運用では、キャラクター「ナナコ」の投稿制作を別の代理店さんにお願いしていたのですが、SNSトレンドへの対応やキャラクターIPの活用をもっと積極的にやりたいと考えていました。その時SNSプラットフォームの営業担当さんからNAVICUSさんのお名前を聞いて、ご相談したのがきっかけです。
武内
なるほど、SNS活用を強化したいというニーズで弊社にお声がけいただいたのですね。
葛西
はい。当時、nanaco自体の認知度はテレビCMの効果もあって40~50代の主婦層では高かったのですが、10~20代の若年層には弱い状況でした。そこで「どう若年層にリーチするか」が課題となり、その手段のひとつとしてSNSに注力しようと決めました。その際にNAVICUSさんを知り、「ぜひ一緒にやりましょう」という流れになりました。
武内
NAVICUSにご期待いただいた点としては、どういったところでしょうか?
葛西
一番はSNSというメディアへの理解が深いところですね。企業側がSNSで発信する際って、つい自分たちの伝えたいことを一方的に押しがちになると思うのです。実際、私たちも当初は「nanacoの良さを知ってもらいたい!」という想いが先行していました。しかしNAVICUSさんは最初の提案段階から「受け手に何を届けたいのか」を丁寧に整理してくれて、企業の独りよがりにならない投稿設計をしてくださいました。nanacoの既存キャラクターを大事に活かしつつ、若年層に響くアカウントの方向性を一緒に考えてくれた点も決め手でした。

武内
嬉しいお言葉です。既存の魅力を残しつつも、ユーザー視点を取り入れた発信に切り替える部分をご評価いただけたのですね。
Z世代に響く“推し活”戦略で認知拡大
武内
nanaco公式Xでは、Z世代にアプローチするため「推し活」の文脈を取り入れているとうかがいました。今やZ世代を中心に「推し活」は経済を動かすほどの盛り上がりを見せていますよね。この戦略について詳しく教えてください。
葛西
はい。NAVICUSさんとご一緒する少し前から、実は社内で「ナナコを推し活の文脈で盛り上げていこう」という動き自体は始まっていました。若年層、とりわけZ世代には自分の“推し”を応援する文化が根付いていますし、SNSも推し活には欠かせないツールです。そこで、ナナコを「推し活をがんばるキャラクター」という位置づけで発信していくことで、より身近に感じてもらおうと考えたのです。
武内
単に企業キャラクターとして情報発信するのではなく、ユーザーと同じ目線で推し活を楽しむ存在にしたということですね。
葛西
そうですね。NAVICUSさんには、いきなりキャラ設定を変えすぎずに既存のナナコの世界観を活かしつつ、推し活要素を強める形で戦略を作っていただきました。たとえば推しのライブに当選して喜ぶナナコの様子の投稿をしたり、ファンの皆さんにも自分の推しへの想いを語ってもらえるようなハッシュタグ企画を企画したり。そうした発信に切り替えることで、「ナナコって推し活してるんだ!」と若い世代にも興味を持ってもらいやすくなったと感じます。結果としてnanaco公式Xのフォロワーも増え、Z世代への認知拡大につながりました。
武内
推し活という親しみやすいテーマを通じて、Z世代との距離を縮められたわけですね。まさにファンの共感や参加を促すアプローチで、理想的だと思います。
日常投稿は内製、攻めの施策は専門支援で
武内
ここからは、現在の運用体制についてお伺いします。社内の内製チームで行う部分と、我々のような外部パートナーに依頼する部分の役割分担はどのようにされていますか?
葛西
弊社の場合、日々の通常投稿は基本的に弊社で決めています。キャラクターの口調や世界観などブランドの一貫性に関わる根幹部分は自社でしっかり握るようにしているのです。一方で、画像制作などデザイン面は社内に専門デザイナーがいないこともあって、別途代理店さんにお願いしています。また、流行を取り入れた企画投稿やSNS特有のテクニカルな施策については、NAVICUSさんのような外部パートナーの知恵や提案も積極的に活かしています。
武内
いわゆるハイブリッド型の運用ですね。ブランドイメージを損なわない日常運用は御社主体で行い、トレンドを押さえた攻めの企画やクリエイティブ面で私たちもお力添えする、と。
葛西
そうなりますね。実際NAVICUSさんには月次の分析レポート作成やコンサルティングもお願いしていますし、「次はこんな流行を取り入れた投稿をしてみませんか?」といったアイデア出しやクリエイティブ制作でも支援いただいています。我々だけでは発想が固まりがちな部分に、新鮮な刺激を与えてもらっている感覚です。
武内
ありがとうございます。ところで、外部パートナーと組む際によく聞く懸念として「自社の商品やサービスのことをわかってもらえないのでは」という声があります。その点、御社では何か工夫されていることはありますか?
葛西
そうですね…… 実はサービスやキャンペーンなどの施策内容そのものを細かく理解してもらうことには、あまり注力していないです。と言うのも、Xの投稿では文字量も限られているので、商品機能を詳しく説明する投稿自体はほとんどなくて(笑)。最低限のサービス内容は押さえつつ、それよりも「nanacoのキャラクターとして何をする・しないか」といったレギュレーション、つまりナナコの可愛さや世界観をまず理解していただくようにしました。NAVICUSさんはこちらの狙いを的確に汲み取ってくださっていて、他社事例の知見も交えながら「この可愛さを最大限に活かすにはこんな表現はどうでしょう?」と次々提案してくださいます。
武内
私たちとしても、御社のキャラクター「ナナコ」が本当に魅力的なので、どうしたらユーザーにもっと愛されるか考えるのを楽しんでいます。NAVICUSにはエンタメ業界の支援経験が豊富なメンバーも多く、エンドユーザー目線でキャラクターに愛着を持って取り組む社風があります。そういったスタンスがお役に立てているのであれば嬉しいですね。
葛西
おかげさまで、NAVICUSさんからいただく画像案はナナコの持ち味を活かしたギリギリのラインを攻めてくださるものが多く、「そこまでやっちゃいます?(笑)」と思うこともありますが、最終的にはうまく調整して、ちょうど良い塩梅の投稿に仕上げてもらっています。
武内
ありがとうございます。お互いにキャラクター愛があるからこそ絶妙なバランスで企画を形にできている、ということですね。

盛り上がった施策例:「#推しに願いを」七夕キャンペーン&「いい推しの日」
武内
これまで実施した施策の中で、特に反響が大きかったものや印象に残っている事例を教えてください。
葛西
いろいろありますが…… やはり「推し活」を前面に出したキャンペーンは盛り上がりましたね。例えば2023年7月の七夕キャンペーンでは、「#推しに願いを」というハッシュタグを掲げて、セブン銀行さんとのコラボ企画を実施しました。これはnanaco公式Xとセブン銀行公式XのWフォロー&リポストで応募が完了するのですが、加えてユーザーの方々には、自分の“推し”に関する願い事をハッシュタグ付きで投稿していただき、ありがたいことにハッシュタグがトレンド入りするほど反響があり、大いに盛り上がりました。
武内
ハッシュタグを通じてユーザー参加型で推しへの想いを発信してもらう、とても素敵な企画ですね。
葛西
ありがとうございます!続いて翌年の11月4日「いい推しの日」にもキャンペーンを企画しました。こちらは語呂合わせで“推しの日”とされる11月4日に合わせて、「nanacoと推し活キャンペーン」という名称で展開しました。具体的には、毎朝投稿されるキャンペーンポストをリポストすると抽選でnanacoポイントが当たるという大型企画で、加えてWチャンスとして「#推しの輝く瞬間」というハッシュタグを付けて推しにまつわる投稿をしてもらう呼びかけも行いました。
実はこの「いい推しの日」施策、前年にも計画していたのですが直前で延期になり、非常に悔しい思いをした経緯があるのです。なので改めて実現できたときは、本当に感慨深かったですね。社内でも「今年こそリベンジしよう!」と何ヶ月も前から盛り上がっていましたし、チームの想い入れが強い分、ユーザーにも熱量が伝わったキャンペーンになったと感じます。
武内
企業側が心から楽しんで熱意を持っている企画って、ユーザーにもきっと伝わりますよね。SNSでは特にその人間味や温度感がダイレクトに感じられると思います。そういった意味で、nanaco公式Xの取り組みはファンとの距離が縮まる良い成功事例だと私も感じます。
葛西
NAVICUSさんにも企画段階から本当に手厚くサポートしていただいて、ナナコ愛にあふれたクリエイティブをたくさん作ってもらいました。“推し活”というテーマでユーザーさんと一緒に盛り上がれたことは、社内でも大きな自信になりましたね。

KPI発想の転換:インプレッションよりエンゲージメントへ
武内
次に、SNS運用のKPI設定についてお聞きしたいです。NAVICUSから毎月レポーティングを行っていますが、特に重視している数字や指標は何でしょうか?
葛西
目的が若年層への認知拡大なので、最終的なKPIはインプレッション(表示回数)になります。ただ、最近のXは仕様変更もあって単純にインプレッションが伸びにくい傾向がありますよね。ハイライト表示の有無などで数値が左右されることもあり、インプレッション“だけ”を追いかけるのは適切ではないと感じています。
そこで「どうすればインプレッションが伸びるのか」を考えた結果、投稿を見たユーザーに楽しんで反応してもらうことが一番大事だよね、という発想に至りました。具体的には、まずいいねやリプライといったエンゲージメントを増やすことを意識しています。エンゲージメントが増えれば投稿の評価が上がり、結果としてインプレッションも伸びていくと考えているのです。
武内
おっしゃる通りですね。まずは投稿を見てくれた方にしっかり楽しんでリアクションしてもらうことでエンゲージメントが高まり、それがアルゴリズム上の評価にも影響して結果的にインプレッションが伸びていく。まさに最近のSNS運用では重要視されている視点だと思います。
葛西
NAVICUSさんには毎月、投稿ごとのエンゲージメント率やインプレッション数のレポートを出していただき、それ以降社内でも細かく分析・共有するようになりました。「なぜこの投稿は良かったのか?」をチームで議論し、次の施策につなげるというサイクルができています。
武内
定量的な分析習慣が根付いてきたのですね。それによって何か意外な発見や、具体的な改善アクションにつながったことはありますか?
葛西
細かい例ですと、「ナナコの謎解きクイズ投稿」のクリエイティブ改善がありました。以前は毎回同じような色合いの画像で出題していたのですが、レポートでご指摘いただいて、出題内容のテキスト自体を画像に入れてみたり、色味にバリエーションを付けてみたりと工夫したところ、画像のクリック率やインプレッション数が明らかに伸びました。
毎月投稿している「推し活カレンダー」も、最初は季節に合わせた可愛いイラストを載せるだけだったのですが、NAVICUSさんから「推し活ワードが画像内に入っているほうが結果が良い」と分析結果をいただき、毎月キャラクターが詠むちょっとした川柳風のフレーズを入れるようにしました。これもユーザーさんからの反応が良くなった例です。
武内
データに基づく示唆を即座に取り入れてくださるので、こちらも提案のしがいがあります。分析レポートをただ出すだけでなく、お互いに知恵を出し合って改善に活かしているのが理想的ですね。
葛西
はい、本当にNAVICUSさんには色々と勉強させてもらっています(笑)。
今後の展望:クレジットカード公式Xの開設とさらなるファン育成へ
武内
最後に、今後の展望についてお伺いします。これから挑戦しようと考えていること、目指したい姿などがあればぜひ教えてください。
葛西
まずひとつは、先ほど少し触れた数字まわりの分析強化ですね。NAVICUSさんにはロジカルで愛のあるレポートを引き続きお願いしつつ、順調に増えているフォロワー数のほかに伸び悩んでいるインプレッションやエンゲージメントをどう打開するか、より突き詰めていきたいです。
武内
データドリブンに課題解決を図っていくと。
葛西
はい。もうひとつは、新しい公式SNSアカウントの立ち上げです。実は弊社のクレジットカード「セブンカード・プラス」関連では、今まで公式SNSアカウントを一切持っていなかったのです。それをこの度ぜひ強化していこうということで、NAVICUSさんにも協力いただきながら9月に「セブンカード【公式】」のXアカウントを開設し、まずは世の中に存在を知ってもらうところからスタートしました。クレジットカードの方はnanacoほど明確に「Z世代狙い」といったセグメントは絞らず、とにかくまだ知らない人に知ってもらう・触れてもらうことが第一目標のアカウントになる予定です。認知が拡大した後は、ユーザーのクチコミが増えるような運用に取り組んで、最終的にサービスを多くの方にご利用いただけるようになったら嬉しいです。
武内
SNSでまず存在を知ってもらい、発信と同時にユーザーの声を聞くことで顧客理解を深める場にもなりますよね。きっと新しい発見もあるはずですし、私たちもご一緒できるのが楽しみです。
葛西
私自身、SNSアカウントの立ち上げは初めての経験なので、「こんなことをやりたいけど何から手を付ければ……」という手探り状態からNAVICUSさんに相談させていただきました。限られた予算の中でX以外にどのプラットフォームが良いかというところから、投稿頻度やスケジュールの組み方まで、佐久間さんをはじめ皆さんに細かくアドバイスいただいています。本当に助かりました。おかげさまで社内の合意も得られ、まずはXの開設に漕ぎつけました。このクレジットカードの公式SNSもファンを育てる良い場にしていきたいですし、NAVICUSさんとは広く・長く・深くお付き合いしながら一緒に盛り上げていけたらと思っています!
武内
ありがとうございます!こちらこそ、ぜひ末永くよろしくお願いいたします。一緒に楽しいSNS運用を創り上げていきましょう。
葛西
よろしくお願いします。本日はありがとうございました!

