新作タイトルのコミュニティ支援は、既存タイトルの運用とは根本的に考え方が異なります。ユーザーとの関係値がゼロの状態から始まるからこそ、情報を届けるだけでなく、そのタイトルとの「距離感を決める場所」としてSNSやコミュニティを設計することが重要です。

一口に新作といっても、IPタイトル・後継作・完全新作では、立ち上げ時に見るべきポイントがまったく異なります。本コラムでは、タイプ別の特徴と、共通して大切なことを整理します。

  • 新作タイトルのSNS・コミュニティは情報発信の場ではなく「ユーザーが距離感を決める場」
  • IPタイトルは、新要素紹介より先に「IPを大切に扱っているか」という信頼づくりが優先
  • 後継作は「受け継ぐもの」と「進化するもの」を両方丁寧に伝える必要がある
  • 完全新作は、情報量よりも「自分に関係がありそう」と思わせる感情の入り口づくりが先
  • 共通して大切なのは、無理に盛り上げず、熱量の「芽」を見つけて育てる姿勢

なぜ新作タイトルのコミュニティ支援は難しいのか

既存タイトルの場合、すでにユーザーの中に遊び方、好きなポイント、コミュニティの空気感が育まれています。しかし新作タイトルは、そのすべてがゼロから始まります。

リリース前のユーザーの感情は一様ではありません。期待している人もいれば、様子見の人もいる。IPやシリーズものなら「楽しみ」と「大丈夫かな」という不安が同時に存在します。完全新作なら、自分に関係があるゲームかどうかすら判断できていない人がほとんどです。

こうした状況で陥りやすいのが、運営側の「伝えたいこと」を並べてしまうことです。新作の立ち上げ時期におけるSNSやコミュニティは、情報発信の場ではなく、ユーザーがそのタイトルとの距離感を決める場所です。ここでの発信やユーザーとのやり取りが、「ちょっと追いかけてみようかな」「ベータテストに参加してみようかな」という気持ちに直結します。

IPタイトルの場合:盛り上げる前に、信頼をつくる

既存IPを持つゲームは、リリース前から熱量のある既存ファンが存在します。ただし、それは同時に高い期待値とセットです。ちょっとした違和感——キャラクターの見え方、世界観の扱い方、言葉の選び方——が不安や反発に直結しやすいのが、IPタイトルの難しさです。

IPファンが最初に確認したいのは、「このゲームはIPを大切に扱ってくれるか」という点です。新しい機能やバトルシステムの紹介よりも先に、原作の空気感がどう活かされているか、ファンが大切にしている関係性や世界観をどう尊重しているかを伝えることが、信頼の土台になります。

IPタイトルのコミュニティ支援において大切なのは、まず「この作品は安心して好きでいられる」と思ってもらうことです。その信頼の上に、ゲームとしての新しい遊び方への期待を積み重ねていくのが理想の順序です。

後継作・シリーズものの場合:「受け継ぐもの」と「進化するもの」を丁寧に伝える

前作の続編となる後継作は、最初から熱量のある既存ファンがいる一方で、比較対象が明確に存在します。ユーザーは自然と「何が変わったのか」「好きだった要素は残っているか」「自分の遊び方はできるか」という視点で見ています。

ここで重要なのは、新要素の紹介だけで終わらせないことです。前作で愛されていた部分をきちんと受け継いでいること、そしてなぜ変えるのかという理由を丁寧に伝えること。そうしなければ、「自分たちが好きだったものに置いていかれる」という不安につながってしまいます。

また、既存ファンに寄りすぎると新規ユーザーが入りづらくなる、という課題もあります。「前作を知っている人はここが楽しめる」「初めての人はここから入っても大丈夫」という両方の文脈が伝わるコミュニケーション設計が、後継作の理想形です。

なお、長くシリーズを支えてきた既存ファンにとっては、「昔を知っている」こと自体がコミュニティの中でのステータスになります。その熱量を持つ人たちを最初から巻き込み、新作の発表・体験の場に呼ぶことができれば、立ち上げ時から熱量の高いコミュニティの核がひとつ生まれます。

完全新作(ノンIP)の場合:感情の入り口を先につくる

完全新作は、ユーザーの中にそのゲームに関する文脈がまだ何もない状態からスタートします。キャラクター名も世界観の固有名詞も、受け取る土壌がない段階で大量に出しても、なかなか届きません。

まず大切なのは、「自分に関係がありそうなゲームだ」と思ってもらうことです。たとえば「壮大な世界観のRPGです」という伝え方より、「仲間との選択に悩みたい人に刺さるRPGです」「この一手で空気が変わる読み合いが好きな人向けのゲームです」のように、ユーザーが自分ごととして捉えられる言葉に翻訳することが重要です。

また、「このゲームは○○っぽい」という類似性の活用も有効です。既存タイトルとの接点や、開発会社・プロデューサーのこれまでの実績を文脈として使うことで、「あれが好きな人なら気になるかも」という入り口をつくることができます。

完全新作のコミュニティ支援は、情報量を出すことよりも、「なんか気になる」「自分はこれが好きかもしれない」という小さな引っかかりを積み重ねていくことが出発点です。

ここまでに挙げた3つのタイプ別の特徴と、立ち上げ時のアプローチの違いを一覧表にまとめると、以下のようになります。

項目IPタイトル後継作・シリーズ完全新作
既存ファンの有無◎ 強い熱量と高い期待値◎ 既存ファン+比較対象あり× ゼロから
立ち上げ時の最優先課題IPの扱いへの信頼づくり「受け継ぐもの」と「進化するもの」の両立「自分に関係ある」と思わせる
陥りやすい失敗キャラ・世界観の違和感への反発既存ファンに寄りすぎて新規が入れない固有名詞の連発で離脱
最初に伝えるべきこと原作の空気感の尊重前作で愛された要素の継承理由「〇〇な人に刺さる」の感情翻訳
効果的な施策の方向性世界観を守る公式運用既存ファンを核に巻き込み類似タイトル・開発者実績の文脈活用

立ち上げ時期に共通して大切なこと:熱量の「芽」を見つけて育てる

IPタイトルでも後継作でも完全新作でも、立ち上げ時期に共通して大切なのは「無理に大きく盛り上げようとしすぎないこと」です。

初期のコミュニティは、熱量をつくる場所というより、熱量の「芽」を見つけて育てていく場所だという考え方が大切です。どんな投稿に反応があるか、ユーザーがどんな言葉を使っているか、どこに期待があり、どこに不安があるかを観察し、それを次のコミュニケーションに反映する。このサイクルをいかに早く回せるかが、新作タイトルの立ち上げ支援における最大のポイントです。

コミュニティは一枚岩ではありません。さまざまな熱量の層が散在しており、関係性があったりなかったりします。どこにどんな塊があるのかを把握し、どのタイミングでどこに光を当てるかを設計することが、コミュニティ運用の本質的な仕事です。

Xのクチコミやリプライ、DiscordやLINEトークルームの会話、キャンペーン参加時のコメントなど、ユーザーの声を丁寧に拾い、「このキャラクターへの反応が大きい」「この遊び方の説明が伝わると興味を持たれやすい」「ここは誤解されやすい」といった発見を積み上げることが、立ち上げ支援の土台になります。

NAVICUSのゲーム・エンタメ支援

NAVICUSでは、IPタイトル・後継作・完全新作それぞれの特性を踏まえたコミュニティ設計から、SNS運用・キャンペーン設計・ユーザーの声の分析まで一気通貫でご支援しています。

「立ち上げ期のコミュニケーション設計に不安がある」「ファンの熱量をどう育てればいいかわからない」といったお悩みがある場合は、ぜひお気軽にご相談ください。

まとめ

新作タイトルのコミュニティ支援は、投稿を管理するだけでなく、「誰に、どんな理由で、どんな風に好きになってもらうか」を最初の一歩から設計する仕事です。

IPタイトルは信頼づくりから、後継作は「受け継ぐもの」と「進化するもの」の両立から、完全新作は感情の入り口づくりから——それぞれのタイプの難しさは異なりますが、共通しているのはユーザーがタイトルを好きになる理由を丁寧に見つけ、育てていくことです。

ゲームがリリースされる瞬間から、ユーザーにとってのそのゲームとの記憶と体験が始まります。公式アカウントの言葉遣い、情報公開の順番、ユーザーの反応への向き合い方、コミュニティの空気感——その一つひとつが、タイトルの印象をつくります。

新作ゲームのコミュニティ支援は、愛され続ける理由を最初の一歩から設計する仕事です。

よくある質問

IPタイトルと完全新作で、SNS運用の優先順位はどう変わりますか?

IPタイトルは「原作を大切に扱っているか」という信頼の提示が最優先になります。一方、完全新作はまず「自分に関係があるゲームかもしれない」と思ってもらう、感情の入り口づくりが優先です。情報を出す順番と量の設計が、タイプによって大きく異なります。

後継作で既存ファンと新規ユーザーの両方に向けた発信は、具体的にどう作ればいいですか?

一つの投稿の中で「前作を知っている人が楽しめる文脈」と「初めての人でも入りやすい文脈」の両方を意識して言葉を選ぶことが基本です。たとえば前作からの変更点を伝える際に、変更の理由と、新規ユーザーにとっての遊びやすさの両方に触れる構成が効果的です。

立ち上げ期のコミュニティ運用で、最初に何から始めればいいですか?

大きく盛り上げることを急がず、まずユーザーの反応を観察することから始めるのがおすすめです。どの投稿に反応があったか、どんな言葉が使われているかを拾い、次のコミュニケーションに反映するサイクルを早く回すことが、立ち上げ期で最も重要な動きです。

NAVICUS Inc.

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