いざという時に迷わないためのSNS運用の備え

災害発生時、SNSは単なる情報発信ツールではなく、住民の命や生活を支える「情報インフラ」の一つとして重要な役割を担います。実際に、「東日本大震災」の時には、市民の方々が情報収集や救助要請・安否確認などでSNSを利用しており、3月11日の震災当日以降、被災地域の自治体が運用するXアカウントの投稿数とアカウントのフォロワー数は約10倍に増加しています。※1 

SNSはリアルタイムで情報を届けられる一方、拡散力が大きいからこそ、発信内容や判断を誤ると混乱を招くリスクもあります。そのため、担当者が迷わず発信できるよう、平時からの備えが重要です。

自治体では、災害発生直後に防災無線や自動通知で避難情報などを迅速に発信できます。しかし、住民が本当に必要とするのはその後の生活に直結する情報です。どこの避難所が空いているのか、水や物資はどこでもらえるのか、支援を受けるには何をすればよいのか。
こうした情報は自治体が状況に応じて発信する必要があります。

本コラムでは、災害時に自治体がXやLINEなどのSNSを活用し、正確な情報を迅速に届けるための基本的な考え方と初動対応のポイントを解説します。

自治体における災害時SNS運用の備えを整える第一歩となれば幸いです。

※1:コラム 震災時におけるTwitterの活用状況について

  • 災害時のSNS運用において、その場の機転に頼らない「平時の準備(土台)」が初動対応をスムーズにする鍵となる
  • XやLINEなど、各プラットフォームの特性を理解した使い分けが、住民への確実な情報伝達に繋がる
  • 焦りによる「善意のNG発信」を防ぎ、スピードと正確性を両立するために、事前のフローの共有やテンプレート化が有効である
用語解説出典
Jアラート(全国瞬時警報システム)弾道ミサイルや大規模地震・津波など、対処に時間的余裕がない緊急事態が発生した際に、国から住民へ情報を瞬時に届けるシステム。携帯電話への緊急速報メールや、市町村の防災無線を自動で起動させることで、人の手を介さずに警報を伝達する。総務省消防庁「全国瞬時警報システム(Jアラート)の概要 | 消防庁の組織および所掌業務
防災無線(市町村防災行政無線)市町村が整備・運用する、住民への情報伝達のための無線通信システム。屋外に設置されたスピーカーや、各家庭に配備された戸別受信機を通じて、避難情報・気象警報などを音声で一斉に放送する。インターネットや携帯電話が使えない状況でも機能するため、災害時の情報伝達手段として重要な役割を担う。Jアラートとも連携しており、国からの緊急情報を自動で受信・放送する仕組みも備えている。総務省「免許関係|防災行政無線
緊急連絡網災害や事故などの緊急事態が発生した際に、「誰がどの順番でどこに連絡するのか」をあらかじめ定めた連絡体制のこと。SNS運用においては、SNS担当者・承認者・夜間代理担当・危機管理課責任者などの連絡ルートを事前に整備しておくことで、深夜・休日・担当者不在の場合でも、情報発信が滞らない体制を維持することができる。関西電力「企業向け緊急連絡網の作り方・作成例|効果的な運用ルールやポイントを解説

第1章:災害時のSNS初動対応を支える「3つの基本原則」

災害時のSNS運用では、限られた時間と情報の中での対応が必要であるため、事前に「何を重視して発信するのか」という共通の考え方を整理しておくことが重要です。

パニックを防ぎ、公式として信頼される情報を届けるためには、初動対応の段階で押さえるべき基本原則があります。

本章では、災害時のSNS発信の土台となる3つの基本原則を紹介します。

原則① 最適なプラットフォーム選び

災害時の情報発信では、目的や情報の性質に応じてSNSを使い分け、必要な人に適切な方法で情報を届けることが重要です。

原則② 正確性

災害時には未確認情報や不確かな情報が拡散されやすくなります。それらの拡散を防ぎ、事実に基づいた情報のみを誠実に発信する姿勢が求められます。

原則③ スピード

被害状況や避難情報などの情報は、状況が変化する中でも迅速に届けることが重要です。

第2章:【原則① 最適なプラットフォーム選び】焦らないための「プラットフォームの役割分担」

本章では、災害時に迷わず情報を届けるための、SNSごとの役割分担の考え方について解説します。

災害時においては、複数のツールに同じ情報を一律で流すのではなく、目的に応じて情報導線を整理することが重要です。あらかじめ各SNSの特性を理解し、役割を分担しておくことで、より効果的に住民へ情報を届けることができます。

たとえば、主要なツールであるXとLINEでも、それぞれ役割は異なります。

  • X(旧:Twitter):速報性と拡散力に優れ、広く素早く状況を周知する役割

   →通行止めや速報など

  • LINE:登録者へ確実に情報を届け、生活に密着した内容を伝える役割

   →給水所の案内や支援の申請方法など

このように、それぞれの特性に合わせて住民が受け取りやすい形に調整して配信することが、必要な情報を適切に届けるポイントとなります。

第3章:【原則② 正確性】善意が混乱を招く?災害時にやってはいけない投稿

本章では、災害時のSNS発信において重要となる「正確性」と、混乱を招きかねないNG投稿について解説します。

SNSは、情報を迅速に、広く届けられる強力なツールである一方、誤った情報も同じスピードで拡散されるリスクがあります。実際に、2024年の能登半島地震の発災後24時間以内に、Xに投稿された救助要請のうち、約1割は偽の情報と推定されました。(※2)

※2:Xの救助要請、1割が偽情報 能登半島地震で | nippon.com

また、善意での発信であっても、不正確な内容や誤解を招く表現は住民の不安を高め、現場の混乱につながる可能性があります。

特に、次のような投稿は避ける必要があります。

  • 曖昧で誤解を生む表現による不要な不安の助長(例:「全域が危険です!」)
  • 時系列が不明な情報による混乱を招く発信(例:「いま津波が来ています!」など)
  • 未確認の住民投稿の引用
  • 古い情報を固定投稿のままにするなど、最新状況がわかりにくい運用
  • 誤投稿を黙って削除する、コメントを放置するといった対応不足

正確性が担保できない場合は、無理に発信せず、確認できた事実のみを誠実に伝える姿勢が重要です。こうした対応の積み重ねが、災害時における公式アカウントの信頼性を守り、住民が安心して情報を受け取れる環境につながります。

第4章:【原則③ スピード】「想定外」に対応するための土台づくり「時系列フローと平時の準備」

本章では、災害時に迅速な情報発信を実現するための「平時の準備」について解説します。

スピードはその場の判断力だけで生まれるものではなく、平時からの準備によって支えられます。災害時には必ず想定外の事態が発生するため、基本となるフローや役割分担をあらかじめ整理しておくことが、柔軟な対応力につながります。

まず、災害時の発信では、時間経過に応じた「基本のフロー」をチームで共有しておくことが重要です。発災後に何を発信すべきかを整理しておくことで、迷わず対応できます。

発災直後からの情報発信

Phase1(発災直後)

  • 参集・災害対策本部設置準備が最優先であることを念頭に、可能な範囲で対応
  • 各情報やその入手方法を確認し、整理しやすい状況を確保する

Phase2(発災後数時間以内)

  • ライフライン、避難所、交通、学校・保育など、各部署から情報が集約できたものを発信する。部署をまたぐ情報を集約する場合には公式HPのURLへ案内する

Phase3(翌日以降)

  • り災証明や各種支援金、ごみ収集、復旧情報、詐欺の周囲喚起、ボランティアなどの発信をする

次に重要なのが、「スピードを妨げない体制づくり」です。

ここでは4つご紹介します。

事前準備1 (物理的な)準備

  • 担当者(主・副・夜間対応)のリスト化
  • アカウントのログイン情報の共有
  • 二段階認証への対応方法の整理
  • 「緊急時は事後承認可」など承認フローの簡略化
  • 防災担当部署との連絡経路(緊急連絡網)の整備
  • 緊急連絡先の一覧化
    (SNS担当者、承認者、夜間代理、危機管理課責任者、ログイン情報の保管先)

事前準備2  「誰が投稿するのかわからない」を防ぐ役割分担の明確化

  • 危機管理課:情報を集めて正確性を確認
  • 広報課:SNS用にわかりやすく整理して発信
  • 課長:投稿内容の承認
  • 夜間:代理担当者が承認・対応

このように役割を定めることで、深夜や休日でも発信が止まらない体制を構築できます。

事前準備3  平時に準備しておく「届く運用」

  • LINE登録者を増やす取り組み
  • 高齢者にも登録してもらう導線づくり
  • 多言語案内の準備
  • 月1回の訓練投稿
  • デマ訂正の練習

災害時に成果が出るかどうかは、こうした平時の準備に大きく左右されます。事前に体制と運用を整えておくことが、迅速な情報発信を支える土台となります。

事前準備4  初動を早める「体制チェック」・「投稿テンプレート」の準備

特に、以下のような内容はテンプレート化しておくことが有効です。

  • 初動時の補足情報(状況更新・追加情報)
  • 避難所情報の案内
  • 断水・停電などのライフライン関連情報
  • 支援申請や手続きに関する案内
  • デマ訂正・注意喚起

災害時にゼロから文章を作成するのは現実的ではなく、判断や確認に時間を要し、初動の遅れにつながる可能性があります。

このように、情報をあらかじめ整理しておくことで、担当者は必要な情報を埋めるだけで発信でき、迅速かつ正確な対応が可能になります。

最後に:担当者とアカウントの信頼を守る「マニュアルのご案内」

災害時のSNS運用は、ツールの特性理解、正確な発信、そして平時からの準備があってこそ成り立ちます。いざという時に迷わず対応するためには、日頃から体制やルールを整理し、実務に落とし込んでおくことが重要です。

本コラムでご紹介した内容を、担当者の皆様が無理なく実践できるようにまとめたのが、当社の【災害・緊急時のSNS運用マニュアル】です。本編では、各原則や運用の考え方をより詳しく解説しているほか、実務ですぐに活用できる付録もご用意しています。

  • 付録①:災害別・状況別にそのまま使える「パターン別投稿テンプレート(Excel)」
  • 付録②:平時に確認しておくべき「体制・ルール等の準備チェックリスト」

チェックリストでは、平時の準備状況や発災直後の対応、翌日以降に発信すべき内容などを確認できるため、担当者が変わった場合でも一定の運用レベルを維持することができます。

マニュアルより一部抜粋「投稿テンプレート」

担当者の負担を減らしながら、迅速で確実な情報発信を行うための「お守り」として、ぜひ本マニュアルをご活用ください!

▼自治体向けSNSマニュアルの詳細はこちら
https://gov.navicus.jp/

よくある質問(FAQ)

Q. Jアラートや防災無線の「自動配信」が連携されています。それ以外の発信の準備も必要ですか?

自動配信は即時警報に優れる反面、避難所の混雑や給水所といった生活行動を支える情報は、手動発信が求められる傾向にあります。

刻々と変わる生活情報を届け、自動配信を補完するためにも、SNS手動発信の準備をしておくと安心に繋がると考えられます。

Q. 災害時のSNS運用ルールやテンプレートは、庁内だけで作成できますか?

 A. もちろん可能ですが、承認フロー設計や災害別のNGルールをゼロから作成すると、担当者様への負担が大きくなることも考えられます。

本マニュアルの「パターン別テンプレート」や「準備チェックリスト」を活用することで、作成の手間を和らげる効果が期待できます。

Q. NAVICUSは、自治体向けにどのような支援が得意ですか?

企業向け支援で培ったノウハウを活かし、地域と住民の長期的な関係づくりをサポートしております。

SNSの運用代行やアドバイザリーをはじめ、広告運用、職員様向け勉強会など、地域の魅力発信や人手不足の課題に対し、自治体様に寄り添った幅広いご提案を行っております。

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