「今日の投稿文、どう書けばいいだろう…..」
自治体のSNS運用では、毎回の投稿内容の作成に悩む担当者の方もいらっしゃるのではないでしょうか。
また、SNS運用が特定の職員の経験や得意・不得意に依存してしまい、異動や担当変更の際に運用の質の維持が困難といった課題が生じることがあります。
こうした課題の解決策のひとつとして注目されているのが、AIの活用です。
AIを活用することで、SNS運用経験の有無にかかわらず、一定水準の投稿案を作成しやすくなり、投稿作成業務の属人化解消につながる可能性があります。
一方で、「とりあえずAIに聞けば良い」という使い方には注意が必要です。
AIを効果的に活用するためには、適切な指示の出し方(プロンプト設計)や、誤情報・情報漏洩を防ぐための安全面への配慮が欠かせません。
本コラムでは、自治体SNS運用における生成AI活用の可能性とともに、実際に運用へ取り入れる際に押さえておきたい考え方と注意点についてご紹介します。
要点まとめ
- AIはすでに多くの自治体で使われ始めている
- AIを使用する際には整合性や情報管理などに配慮する必要がある
- 誰でも使えるようになるためには「適切なプロンプト(指示文)」が鍵になる
第1章:自治体のAI活用事例紹介
実際に、自治体の業務において、AI導入は急速に広がっています。
総務省の調査によると、AIの導入率は都道府県・政令指定都市で87〜90%に達しており、市区町村においても、実証中・検討中を含めると約半数が活用に向けて動き始めています。
また、AIをSNS投稿文案の作成に活用した件数は、2023年の101件から、2024年には374件へと大きく増加しています。(※1)
その例として、2つの自治体の活用事例を取り上げます。
静岡県湖西市
静岡県の湖西市では、SNS投稿文の作成を入り口としてAIを導入し、少しずつ活用範囲を広げていきました。
職員が主体となってボトムアップで導入を進めたことに加え、「困りごとを気軽に共有できる雰囲気づくり」が、庁内での活用定着に寄与しました。結果として、約8か月で800時間分の業務削減につながったと報告されています。
北海道当別町
北海道当別町でも、職員主導でAIの導入検討が進められました。
導入後は、説明会や研修会の開催、プロンプト共有など、職員が使いやすい環境整備を進めたことで、庁内アンケートでは継続利用意向が8割以上、AIへの期待が9割以上という結果につながっています。
さらに、議事録作成業務では、従来2〜3時間かかっていた作業が約30分まで短縮されたと報告されています。
これらの事例に共通しているのは、大規模なシステム導入から始めたわけではないという点です。
SNS投稿文作成などの身近な業務から試行を始め、職員が使いやすい環境整備を進めながら、効果を実感しつつ段階的に活用範囲を広げていきました。
第2章:使い始める前に知っておきたいこと
AIは、自治体業務の効率化やSNS運用の負担軽減につながる可能性がある一方で、活用にあたって、いくつか注意すべき点があります。
重要なのは、「危険だから使わない」と考えるのではなく、リスクを正しく理解したうえで、安全に活用できる状態を整えることです。
1.AIが生成する内容は必ず正しいとは限らない
AIは自然で違和感のない文章を作成できますが、事実と異なる内容を出力してしまうことがあります。実際に、存在しない施設名や誤った日時、制度内容などが生成されるケースも報告されています。
そのため、AIの出力内容はそのまま公開するのではなく、下書きとして活用することが重要です。特に、日時・場所・制度名・URLなどは、必ず自治体公式サイトや原資料などの一次情報と照合する必要があります。
また、AIを活用した場合でも、最終的な公開責任を持つのは担当者自身であるという点は変わりません。「AIが作ったから大丈夫」ではなく、人の確認を前提として活用することが重要です。
2.AIへ入力する情報にも注意が必要
AIには、個人情報や機密情報、非公開情報を入力しないことが基本となります。たとえば、住民情報を含む内容や、庁内で検討中の資料、未公開施策に関する相談内容などをそのまま入力することにはリスクがあります。そのため、庁内であらかじめ「何を入力してはいけないか」を整理し、ルール化しておくと、職員も安心して活用しやすくなります。
3.AIサービスの学習設定をオフにする
学習設定とは、ユーザーが入力したテキストや画像、ファイルといった情報を、ChatGPTやGemini、CopilotなどのAIサービスが、将来的な性能向上(再学習)に利用するかどうかを管理する機能のことです。
ChatGPTやGemini、CopilotなどのAIサービスでは、設定によっては入力内容がAIの学習データとして利用される場合があります。
多くのサービスでは、設定画面から学習利用をオフにすることが可能です。自治体として有料プランを契約している場合には、管理者側の設定も確認しておくと安心です。
ただし、この設定はあくまで万が一のリスクを下げるための対策です。
前提として、機密情報や個人情報を入力しない運用を徹底することが重要です。

AIは、正しく活用すれば自治体のSNS運用を支える有効なツールになり得ます。
その一方で、安全に活用するためのリスクやルールを理解したうえで、運用する視点も欠かせません。
第3章:AIを使いこなすためのプロンプトとは?
AIを活用する際、出力される文章の質を大きく左右するのがプロンプトです。
プロンプトとは、AIに対して出す指示文のことを指します。
同じAIを使っていても、どのような指示を与えるかによって出力される文章の内容や品質は大きく変わります。
たとえば、「イベントのSNS投稿を作って」とだけ入力した場合、文字数が長すぎたり、自治体アカウントには合わない表現が含まれていたりと、実際には使いづらい文章が生成されることがあります。
一方で、「自治体の公式SNSアカウント向け」「140字以内」「丁寧な表現で」といった条件を加えるだけでも、実際の運用に近い文章が生成されやすくなります。さらに、対象者や投稿媒体、必ず記載したい情報、避けたい表現などを具体的に伝えることで、出力の精度はさらに高まります。
| プロンプトの具体性 | 例 | 出力された文章の質 |
| 不十分 | イベントのSNS投稿をつくって | 文字数オーバー/自治体に合わない表現 |
| 基本的な指示 | 自治体公式SNS向け/140字以内/丁寧な表現 | 実用に近づく |
| 詳細な指示 | 基本的な指示/対象者/媒体/必須記載事項/禁止表現 | 質が上がる |
| 自治体向けの指示 | 詳細な指示/政治的中立/不安を煽る表現は避ける/炎上チェック | 自治体の運用に最適 |
しかし、自治体SNSにおいては一般的なプロンプトだけではカバーしきれない要素もあります。
たとえば、行政として適切な表現になっているか、過度に煽るような表現や断定的な表現が含まれていないか、政治的中立性が保たれているか、炎上につながる可能性のある表現がないか、といった確認が必要になります。
こうした条件を毎回ゼロから指示するのは、担当者にとって大きな負担になります。
だからこそ、自治体のSNS運用では、あらかじめ必要な条件を整理した「プロンプトの型」を持っておくことが重要です。
プロンプトの型を整備することには、主に以下の利点があります。
- 誰が使っても一定水準の投稿案を作成しやすくなり、投稿作成業務の属人化解消につながる
- 投稿文の書き方について悩む時間を減らし、投稿作成の効率化につながる
- 表現確認の漏れを防ぎ、投稿品質の標準化につながる
- 担当者が異動・変更になった場合でも引き継ぎしやすくなり、継続的な運用につながる
AIは、ただ導入するだけで効果を発揮するものではありません。
前章で紹介した安全面への配慮に加え、適切なプロンプトを整備してはじめて、自治体SNS運用における実用的なツールとして活用することができます。
最後に:担当者とアカウントの信頼を守る「マニュアルのご案内」
AIは、自治体SNS運用における投稿作成の負担軽減や、属人化解消につながる可能性を持っています。
一方で、AIを安心して活用するためには、単にツールを導入するだけでは不十分です。
重要なのは、安全への配慮と適切なプロンプトの型の2つをあわせて整えることです。
1.安全への配慮
- 日時・場所・制度名などを一次情報と照合し、生成内容を人が確認すること(人の確認)
- 個人情報・機密情報を入力しないこと(入力情報の精査)
- 学習設定を適切に管理すること
これらの基本的なルールを押さえておく必要があります。
2.適切なプロンプト(型)
- 担当者の経験やスキルに左右されず、誰が使っても一定水準の投稿案を作成できる共通の型を整備すること
この2つが揃ってはじめて、AIは自治体SNS運用における、実用的なツールとなります。
一方で、AIを実務で活用する際には、プロンプトの型の作成や条件整理に手間がかかるという課題もあります。 また、どのような指示を出せば精度の高い文章が生成されるのかわからない、自治体SNSに適したプロンプトを自分で設計するのは困難といった、AI活用技術に関する悩みが生じる場合もあります。
そこでNAVICUSでは、自治体SNS運用向けに設計した「AI活用の投稿作成マニュアル」を公開しています。
このマニュアルでは、自治体名やイベント内容など、4つの質問に答えるだけでSNS投稿案を作成できます。Instagram・Xの両方に対応しており、ChatGPT・Gemini・Copilotなど主要なAIサービスで利用可能です。無償版でも活用できます。
また、「丁寧な行政らしい文体」「少し親しみやすい文体」「絵文字入りのポップな文体」の3パターンを同時に出力できるため、自治体アカウントの雰囲気に合わせて選択しやすくなっています。
さらに、簡易的な炎上リスクチェックやハッシュタグ案の生成も組み込まれており、「この表現で問題ないだろうか」と一人で悩む時間の軽減にも役立てていただけます。

AIは、正しく活用すれば、自治体SNS運用を支える重要なパートナーとなります。
まずは身近な投稿作成から、「AI活用の投稿作成マニュアル」がお力になれると幸いです。
自治体向けSNSマニュアルの詳細はこちら
FAQ
Q. AIが間違ったことを書きませんか?
A. 書く可能性はあります。AIはあくまで下書き補助として使い、日時・場所・制度名・URLは必ず人が一次情報と照合してください。最終的な公開責任は自治体側にあります。
Q. 無料版AIは使えますか?
A. 動作は可能ですが、個人情報・機密情報・非公開情報は入力しないでください。また、学習設定をオフにしておくことも合わせて推奨します。
Q. 投稿文をそのまま公開してもいいですか?
A. 推奨しません。出力された文章は下書きとして活用し、担当者による確認・承認を経てから公開してください。
Q. 毎回同じ文章になりませんか?
A. 入力内容(イベント名・詳細)が違えば、出力も毎回異なります。また、複数のトーンで出力するよう型を設計しておけば、バリエーションも持たせられます。
Q. NAVICUSは、自治体向けのどのような支援が得意ですか?
A. 企業向け支援で培ったSNSノウハウを活かし、自治体の広報・住民コミュニケーション支援を行っています。SNS運用代行・アドバイザリー・職員向け勉強会など、地域の特性に合わせた幅広いご提案が可能です。
