「去年のこの投稿、元データどこだっけ」。Instagram運用の現場で、こうしたやり取りが月に何度も発生していないでしょうか。
投稿は公開した瞬間から手を離れ、素材ファイルの所在は担当者の記憶のなかだけに残り、その後、担当者の異動や体制の変更で、それまで積み上げてきたものが一度リセットされてしまう例も少なくありません。
ただ、Instagramに限っていえば、投稿は一過性の情報として流れ消えてしまうわけではありません。プロフィールを訪れた人はグリッドをさかのぼり、保存された投稿は何度も見返され、検索や発見タブを経由して新しい読者に数か月前の投稿が届きます。投稿そのものはストックとして機能しているのに、それをつくる側の運用では過去の投稿が資産として管理されていない。多くの現場で起きているのは、このねじれです。
本コラムでは、Instagramに絞って、投稿を資産に変えるためのコンテンツ管理術を、アセット管理・ナレッジ管理・権利/データ管理という3つの領域に分けて整理し、それぞれで何を、どこまで残すべきかを解説します。
要点まとめ
- Instagramは過去の投稿が読まれ続ける媒体である一方、運用側の管理では投稿の情報がストックされないケースが多い
- 投稿の資産化は、アセット管理・ナレッジ管理・権利/データ管理の3領域に分けて捉えると整理しやすい
- アセット管理の要点は保存場所ではなく、再利用を前提とした名前の付け方にある
- ナレッジ管理は数値の記録ではなく、なぜ伸びたかの仮説を残す設計が中心になる
- 権利/データ管理は、使用範囲と許諾の情報を投稿単位でひもづけて初めて機能する
- 3領域を同時に整えるのは難しいため、着手する順番の判断基準を最終章で示す
本コラムのタイトルにある「メディアマスター」とは、NAVICUSが社内で運用している認定制度です。特定のSNSにおいて高度な知見を言語化し、安定した成果を発揮できる担当者を、成果・信頼・再現性の3軸で認定しています。
なかでも再現性の軸では、成果の要因をナレッジやテンプレートとして整理し、ほかの担当者も同じ型で使える形に落とし込めるかどうかが問われます。本コラムで扱うコンテンツ管理は、この再現性を支える土台にあたるものです。
制度の背景や認定の考え方は、コラム「企業SNSで成果を出すプロの基準【NAVICUSのメディアマスター制度解説】」で詳しく解説しています。
第1章 Instagramの投稿は、一過性の情報ではない
過去の投稿が読まれ続ける3つの経路
Instagramで公開した投稿は、タイムラインを流れたあとも読まれ続けます。主な経路は3つです。
ひとつは、プロフィールへの来訪です。広告や他媒体、クチコミをきっかけにアカウントを知った人は、フォローを判断する前にプロフィールを開き、グリッドをさかのぼって確認します。このとき目にされるのは直近の投稿だけではありません。
2つめは保存です。あとで見返す前提で保存された投稿は、公開直後ではなく、その人が必要としたタイミングで読まれます。
3つめは検索と発見タブです。キーワード検索やレコメンドの経路に乗った投稿は、公開から時間が経ったあとに新しい読者へ届くことがあります。
このように過去の投稿は、公開したあとも複数の経路を通じて再び接触されることがあります。投稿の寿命は、公開した直後で終わるわけではありません。
それでも使い捨てになる理由
投稿がストックとして機能しているにもかかわらず、運用側が資産として扱えていないのはなぜでしょうか。
まず、Instagramは媒体のなかで発信の形式が複線化しています。フィード、リール、ストーリーズはそれぞれ制作の工程も素材の形式も異なり、扱うファイルの種類が増えます。本数が増えるほど、管理の設計がないまま運用だけが先に走る状態になりやすくなります。
大企業の場合、ここにさらに固有の事情が重なります。ブランドや商品ごとにアカウントが分かれていること、代理店への委託と内製が混在していること、承認プロセスのなかで素材が複数の場所を経由すること、そして異動のサイクルが管理設計の整備より短いことです。結果として、素材もナレッジも部署や個人の手元に分散します。
資産化できていないと何が起きるか
管理が整っていない状態は、次の3つの形で運用の負担になります。
ひとつは、同じものを作り直す手間です。過去に制作した素材が見つからなければ、実質的にゼロから制作することになります。
2つめは、過去の失敗を繰り返す無駄です。伸びなかった投稿の要因が記録されていなければ、別の担当者が同じ設計で同じ結果を得ることになります。
3つめは、使えない素材を使ってしまうリスクです。利用期限の切れた撮影物や、二次利用の範囲外の素材を、記録がないまま再利用してしまう可能性があります。
実際の運用現場では、担当者の交代後に過去の投稿の元データがどこに格納されているかわからず、必要な素材をすぐに見つけられないことがあります。また、タレントを起用した投稿で、契約期間を過ぎたあとも投稿が取り下げられていなかったケースもありました。
投稿は、公開して終わりではありません。素材の格納場所に加えて、使用期限や権利の条件まで投稿とひもづけて管理しておくことが求められます。
第2章 投稿を資産に変える3つの管理領域
投稿が資産にならない原因は、次の3つの領域に分けて捉えると整理しやすくなります。
| 領域 | Instagramでの対象 | 中心的な問い |
|---|---|---|
| アセット管理 | フィード画像・リール動画の元データ、撮影素材、テンプレート、リールのカバー、ハイライトの構成 | 3か月前の投稿素材を、今すぐ取り出して作り直せますか? |
| ナレッジ管理 | インサイトから立てた仮説、投稿ごとの狙いと結果 | 保存数が伸びた理由を、担当者が代わっても再現できますか? |
| 権利/データ管理 | クチコミ投稿のリポスト許諾、使用した音源、撮影物・出演者の利用範囲、インサイトの数値 | その素材と音源は、どこまで使える状態にありますか? |
何を、どこに残すのか
3つの領域は、残す情報の種類が異なるだけで、保存場所はほぼ2か所に集約されます。
| 残すもの | 保存場所 |
|---|---|
| 素材そのもの | ストレージ(ファイル名で識別する) |
| 狙い・結果・次の一手 | 投稿管理表 |
| 使用した音源、許諾、利用範囲 | 投稿管理表(同じ行に列を追加する) |
| インサイトの数値 | 投稿管理表(月次で書き出す) |
※本コラムでは、投稿ごとの情報を1行にまとめて管理する表を「投稿管理表」と呼びます。呼称は企業によって異なります。
これらは新しい仕組みを立ち上げる話ではなく、素材の識別はファイル名で、それ以外は投稿管理表に列を足すことで対応できます。権利に関する情報を独立した管理簿にせず、投稿と同じ行に置くのが要点です。
現状を確認する9つの項目
自社の運用体制でどの領域が不足しているかは、次の項目で確認できます。
アセット管理
- 3か月前の投稿の元データを、担当者以外が5分以内に見つけられる
- リールのカバー画像が、動画本体と同じ場所に保管されている
- どのファイルが最終版かが、ファイル名だけで判別できる
ナレッジ管理
- 投稿ごとに、公開前に立てた狙いが記録されている
- 伸びた投稿について、なぜ伸びたかの仮説が文章で残っている
- 過去の振り返りを、担当していなかった人が読んで理解できる
権利/データ管理
- クチコミ投稿をリポストした際の許諾のやり取りが残っている
- どの投稿でどの音源を使ったかが記録されている
- 撮影物・出演者の利用範囲と期限が、投稿単位で確認できる
3領域は連動している
この3つは独立しているわけではありません。たとえばナレッジ管理がなければ、どの素材を再利用すべきかの判断ができず、アセット管理は「とりあえず全部残す」に陥ります。権利に関する情報が残っていなければ、再利用できるはずの素材もリスクヘッジから使わない選択をすることになります。
どれかひとつだけを整えても効果が出にくいのは、このためです。
第3章 アセット管理とは何か ― 作ったものを取り出せる状態にする
アセット管理とは、制作した素材を、あとから取り出して再利用できる状態に保つことです。
保存場所より先に決めるのは命名規則
管理を整えようとすると、まず保存先のツールを選定しがちです。ただ、実務で効果が出やすいのは、その前段にある命名規則の統一です。保存先がどれだけ整理されていても、ファイル名から中身が推測できなければ、結局ひとつずつ開いて確認することになります。
命名に含めておくと再利用しやすいのは、次の要素です。
- 公開日または制作日
- フォーマット(feed/reel/story)
- シリーズ名またはテーマ
- 投稿の目的
- 投稿キーワード
- バージョン
たとえば「260415_reel_使い方シリーズ_理解_収納術_v3」のような形です。日付を先頭に置くと時系列で並び、フォーマットを2番目に置くと形式ごとの絞り込みができます。
投稿の目的をファイル名に含めておくと、同じ目的の投稿を横断して見返せるようになります。理解を目的とした投稿だけを並べて比較すれば、どの表現が機能したかを確認する起点になります。
ここでいう投稿の目的とは、認知、理解、興味・検討、来訪、ファン育成といった、その投稿が果たすコミュニケーション上の役割を指します。保存やシェアといった反応そのものは、ここには含めません。
この投稿の目的と、保存やシェアといった反応は、混同されやすい部分です。保存を増やす、シェアを促すといった目標は、あくまで目的を達成できたかを測るための指標であり、何のためにその投稿をするのかという問いへの答えではありません。反応の種類を目的として扱うと、投稿の設計が反応を得る手法に寄り、伝えたかった内容が後回しになります。
ファイル名に残すのは、投稿の目的だけで足ります。素材を再利用する場面で必要になるのは「何を伝えるための素材か」であり、当時どの反応を狙ったかではないためです。反応の種類は、第4章で扱う投稿管理表に記入します。
なお、目的のうちファン育成は、すでに接点のあるユーザーとの関係を深めることを狙う投稿を指します。参加を促す企画、舞台裏の紹介、ユーザー投稿への反応などが該当します。範囲を定めておかないとすべての投稿に当てはまってしまい、絞り込みの目印として機能しなくなるため、投稿単位で判定できる粒度に限定しています。
重要なのは、規則そのものの精度よりも、チーム全員が同じ規則を使えることです。複雑な規則は運用されずに形骸化します。
何をどこまで残すか
残す対象は、公開した完成物だけではありません。
| 対象 | 残す/残さない | 理由 |
|---|---|---|
| 公開した完成物 | 残す | 再利用と実績確認の起点になる |
| 元データ(編集用プロジェクトファイル) | 残す | 文言や価格の差し替えに必要 |
| 撮影原本 | 残す | トリミングやフォーマット変更の再制作に必要 |
| リールのカバー画像 | 残す | グリッドの見え方を左右する独立したアセット |
| 未採用案 | 条件付きで残す | 別の時期に採用できる場合がある。ただし採用版と混同しない保存場所が必要 |
| 中間の書き出しファイル | 残さない | 元データがあれば再現できる |
判断の軸は「元データから再現できるかどうか」です。再現できるものは残さず、再現できないものだけを残すと考えると、量を抑えながら必要なものを確保できます。
Instagram特有の3つの論点
Instagramのアセット管理には、ほかの媒体にはない論点があります。
ひとつは、リールのカバー画像です。カバー画像は動画本体とは別に設定するもので、グリッド上の見え方を決めます。動画ファイルとセットで保管していないと、あとからシリーズの見た目を揃え直すときに再制作が必要になります。
2つめは、グリッドが「現在の見え方」であることです。過去の投稿は、アーカイブではなくプロフィールの一部として今も表示され続けます。デザインのトーンを変更する場合、新しい投稿だけでなく過去の投稿との並びをどう扱うかという判断が発生します。この判断をするには、過去の素材が編集可能な形で残っている必要があります。
3つめは、ハイライトです。ストーリーズの24時間という制約の外側にある、編集可能なストック領域として機能します。カバー画像と構成をアセットとして管理しておくと、キャンペーンや商品追加のたびに整え直す手間が減ります。
型にするか、その都度つくるか
テンプレート化は、すべての投稿に適用するものではありません。
型にしやすいのは、繰り返し発生する投稿です。商品紹介、シリーズ企画、定例のお知らせなどが該当します。これらは構成とデザインを型にしておくと、制作時間が短縮されるだけでなく、担当者が代わっても同じ品質を保てます。
一方で、その都度つくるべき投稿もあります。時事性のある発信や、ひとつの企画に紐づく特別なクリエイティブは、型に当てはめると意図が薄まります。
NAVICUSでの実践例
NAVICUSでは、Googleドライブ上の案件情報を、担当者個人ではなく会社として蓄積するナレッジと捉え、フォルダの構成とファイルの命名規則を共通化しています。
ファイル名は「YYMMDD_会社名_内容」を基本としています。案件フォルダの内部にも、月次運用シート・ツール、キャンペーン、レポート、素材、引き継ぎ資料といった用途ごとの共通フォルダを設けています。
ここで重視しているのは、担当者本人が管理しやすいことではありません。担当者が変わったあとでも、第三者が必要な情報をすぐに見つけられる状態を保つことです。その状態が維持されていれば、過去の制作物や運用のナレッジを次の施策に活用できます。
第4章 ナレッジ管理とは何か ― わかったことを再現できる状態にする
ナレッジ管理とは、運用を通じてわかったことを、担当者が代わっても使える形で残すことです。
記録の置き場所は、投稿カレンダー、投稿管理表、運用シートなど、企業によって呼び方が異なります。本コラムでは、投稿ごとの情報を1行にまとめて管理する表を指して「投稿管理表」と呼びます。新たにつくる必要はなく、すでに運用されている表に列を加えるかたちで問題ありません。
数値の記録だけでは資産にならない
多くの現場では、投稿ごとのリーチや保存数を月次のレポートにまとめています。ただ、数値そのものは時間が経つほど参照されなくなります。半年前の保存率を見ても、そのとき何を狙っていたかがわからなければ、次の判断には使えません。
資産として機能するのは、数値ではなく、数値から立てた仮説のほうです。
なお、Instagramのインサイトで何をどう読むかについては、コラム「Instagramインサイトが『改善ツール』に進化—2026年アップデートで変わった指標の読み方と実践的な活用法」で詳しく解説しています。本コラムで扱うのは、読んだあとに何を残すかです。
残すのは、狙い・結果・次の一手の3点
投稿ごとに残す項目は、多くする必要はありません。次の3点があれば、第三者が読んで判断を再現できます。
| 項目 | 記録する内容 | 例 |
|---|---|---|
| 狙い | 何のための投稿か、それをどの反応で測るか、そのために何をしたか | 商品の使い方への理解を促すことが目的。保存数を指標に置き、情報量を増やして1枚目に要点を集約した |
| 結果 | 狙いに対してどうだったか | 保存数は伸びたが、プロフィール来訪にはつながらなかった |
| 次の一手 | 次に何を変えるか | 最終ページにアカウントの紹介を追加して検証する |
狙いの欄には、3つの要素を順に書きます。何のための投稿かという目的、その達成をどの反応で測るかという指標、そしてそのために何をしたかという設計です。はじめの2つは、第3章で区別した投稿の目的と反応の種類にあたります。
この順序で書いておくと、あとから読み返したときに判断の根拠をたどれます。保存数が伸びなかった場合でも、目的が残っていれば「指標の置き方が適切だったか」という検証ができます。指標だけが記録されていると、次の一手は保存数を増やす手法の検討に限られ、そもそもその投稿で何を伝えたかったのかという問いに立ち返らないまま、改善を進めることになります。
ポイントは、公開前に狙いを書いておくことです。結果を見たあとに書くと、出た数値に合わせた説明になりやすく、仮説の検証として機能しなくなります。
投稿単位と月単位の2層で残す
投稿ごとの記録だけでは、個別の事象が並ぶだけになります。月単位で、その月にわかったことを2〜3行にまとめる層を重ねると、傾向として読めるようになります。
月単位の記録に書くのは、その月で最も効果があった設計と、うまくいかなかった設計、そして翌月に検証する仮説です。これが積み上がると、そのアカウントで効果が出やすい設計が、言葉として残った状態になります。
引き継ぎに耐える条件
ナレッジが資産になっているかどうかは、ひとつの基準で判断できます。それは、担当したことのない人がその記録を読んで、同じ意思決定にたどり着けるかどうかです。
この基準を満たすには、記録に「なぜそう判断したか」が含まれている必要があります。「1枚目を変更した」ではなく「使い方の理解を促す目的で、保存数を指標に置いて1枚目に要点を集約した」と書かれていれば、次の担当者は判断の理由ごと引き継ぐことができます。
属人化を防ぐのは、優秀な人材の配置ではなく、判断の理由が残る投稿管理表の項目設計です。記入する項目が決まっていれば、書く側の負担も減ります。
NAVICUSでの実践例
NAVICUSの投稿管理表には、投稿日、投稿時間、投稿ジャンル、投稿形式、投稿概要といった投稿情報に加えて、ラフやクライアントからのコメント、制作の進捗までを一元的に記載しています。
そのうえで投稿を振り返る際は、リーチやエンゲージメントといった結果だけでなく、ユーザーが投稿のどこで反応したのかまで分解して考えることを意識しています。
フィード投稿であれば、保存数やプロフィールへの遷移を確認しながら、テーマだけでなく1枚目のクリエイティブ、情報の見せ方、投稿内の導線が結果にどう影響したかを振り返ります。リールであれば、再生数だけで判断せず、冒頭でどの程度視聴が継続したか、その後どこまで見てもらえたかを確認し、冒頭の見せ方、尺、構成と視聴行動をセットで分析します。
そのうえで、なぜこの結果になったのかという仮説を立て、次回は何を変えるのか、どの指標で検証するのかまで残します。伸びた投稿を記録するのではなく、再現できる形で学びを残すことを重視しています。
第5章 権利/データ管理とは何か ― 使えるはずのものを使える状態にする
権利/データ管理とは、素材や投稿がどこまで使える状態にあるかを、あとから確認できるようにしておくことです。
なお、本章で扱うのは投稿管理表に何を残すかという運用設計であり、個別の権利判断については自社の法務・権利担当への確認が前提となります。
クチコミ投稿のリポスト
ユーザーが投稿したクチコミを公式アカウントで紹介する場合、投稿者への確認をおこなうのが一般的です。ここで抜けやすいのが、確認したという事実を投稿管理表に残す工程です。
残しておきたいのは、次の4点です。
- 誰に確認したか(アカウント名)
- いつ確認したか
- どの投稿について確認したか(投稿のURL)
- どこまでの範囲で許諾を得たか(掲載する媒体、期間、加工の可否)
やり取りはダイレクトメッセージでおこなわれることが多く、担当者のアカウント内にだけ残る状態になりがちです。担当者が変わると確認できなくなるため、該当する投稿の行に転記しておくことが実務上の要点になります。
音源の扱い
リールで使用する音源は、アカウントの種別によって利用できる範囲が異なります。Instagramのライセンス音楽ライブラリは個人的・非商用での利用を想定したものであり、一部のビジネスアカウントでは利用できる音源が制限されています。
企業アカウントで音源を使用する場合は、商用利用が可能なMeta Sound Collectionを活用するなど、利用の条件を確認したうえで選定する必要があります。アプリ上に表示されている音源が、そのまま企業アカウントで使えるとは限らない点に注意が必要です。
運用側の実務としては、選定の段階よりも、記録の段階に注意が必要です。どの投稿でどの音源を使ったかが残っていないと、投稿を再利用したり、別のフォーマットに転用したりする際に、都度確認し直すことになります。
投稿管理表に音源名の列を1つ加えておくだけで、この確認の手間はなくなります。
撮影物と出演者
撮影した写真や動画には、利用できる期間と媒体の範囲が設定されていることがあります。モデルやタレントが出演している場合はとくに、範囲の管理が必要になります。
ここでの実務上の要点は、権利の情報を素材ファイル側だけでなく、投稿側にもひもづけておくことです。素材フォルダに条件が書かれていても、「この投稿を再利用してよいか」を判断する場面では、投稿から条件をたどれる状態になっている必要があります。
インサイトのデータ
Instagramのインサイトは、さかのぼって確認できる範囲が画面や指標によって異なります。アカウントやコンテンツを横断して期間を指定する場合は過去90日以内が対象となる一方、個別のコンテンツでは扱いが異なります。
そのため、長期的な比較に使いたい数値は、定期的に書き出して保管しておく運用が現実的です。書き出す先を第4章の投稿管理表と同じにしておくと、ナレッジ管理と二重管理にならずに済みます。
第6章 3領域のどこから着手するか
3つの領域を同時に整えるのは、通常の運用と並行しておこなう限り現実的ではありません。着手する順番を決める必要があります。
判断の基準
次の3つの観点で、自社がどの領域から着手すべきかを判断できます。
- 体制変更が近いかどうか
異動や代理店の切り替えが半年以内に見込まれる場合は、ナレッジ管理を優先します。人が抜けたあとでは、判断の理由を復元できないためです。 - 投稿本数が多いかどうか
月の投稿数が多く、複数のフォーマットを併用している場合は、アセット管理の効果が早く出ます。制作の重複がそのまま工数の削減につながるためです。 - 外部素材とクチコミの比率が高いかどうか
撮影素材や出演者を含む投稿、ユーザー投稿の紹介が多い場合は、権利/データ管理を優先します。ここは対応が漏れたときの影響が最も大きい領域です。
最初の1か月でやること
いずれの領域から始める場合も、最初の1か月で取りかかれるのは範囲を絞った作業です。
- 命名規則を1つ決め、新規の投稿から適用する
- 投稿管理表に、狙い・結果・次の一手の3項目を追加する
- 音源と許諾の記録欄を、既存の投稿管理表に1列ずつ足す
過去の投稿にさかのぼって適用する作業は、この段階では着手しません。新規分の運用が定着する前に過去分へ手を広げると、どちらも中途半端になります。
3か月でやること
新規分の運用が回り始めたあとで、過去分の整理に着手します。このとき全件を対象にする必要はありません。再利用の可能性が高い投稿、つまり反応がよかった投稿とシリーズ企画に絞って整えると、投じた工数が回収しやすくなります。
NAVICUSが支援に入るときの順番
NAVICUSがInstagramの運用支援を始める際は、目指す方向性の整備と、運用の整備の2つから着手しています。
目指す方向性の整備では、アカウントを通じて何を実現したいのかを確認し、ターゲット、発信テーマ、投稿の役割、KPIを整理します。ここが曖昧なままだと、投稿を振り返る際に、何をもって良かったと判断するのかが定まりません。第3章と第4章で投稿の目的を書き残すことを重視したのは、この判断の基準を日々の運用のなかに持ち込むためです。
運用の整備では、その方向性を継続して実行できるよう、投稿管理表、素材の格納場所、ファイルの命名規則、制作と確認のフローを整えます。あわせて、投稿前のチェック体制、権限の管理、素材やタレントの利用条件と使用期限、誤投稿や緊急時の対応ルールといったリスク対策も同時に整備します。
この2つの整備を先に済ませることで、方向性に沿って安全に運用しながら、投稿ごとの振り返りと改善を積み重ねられる状態がつくれます。
NAVICUSのInstagram運用支援
NAVICUSでは、Instagramをはじめとする各SNSについて、目的の設計から日々の運用、社内で運用を回すための内製化支援まで一気通貫でご支援しています。本コラムで扱った管理設計の整備についても、運用体制の見直しとあわせてご相談いただけます。
現在の運用に課題を感じていらっしゃる場合は、お気軽にご相談ください。
まとめ
Instagramの投稿は、公開後も読まれ続けます。にもかかわらず、つくる側で過去の投稿が資産として管理されていなければ、積み上げたものは担当者の交代とともに失われます。
投稿を資産に変えるために整えるべきは、次の3領域です。作ったものを取り出せる状態にするアセット管理、わかったことを再現できる状態にするナレッジ管理、そして使えるはずのものを使える状態にする権利/データ管理です。
3つを同時に整える必要はありません。体制変更の近さ、投稿本数、外部素材の比率という3つの観点から着手する順番を決め、新規の投稿から適用していく。過去分の整理は、そのあとで構いません。
投稿の質を上げる工夫に取り組む前に、まず投稿が残る状態をつくる。遠回りに見えて、これが再現性のある運用への近道になると考えられます。
よくある質問(FAQ)
A. 特定のツールを導入すれば解決する類のものではありません。多くの場合、すでに社内で使われているストレージと表計算ソフトで足ります。ツールの選定より先に、命名規則と記録する項目を決めることをおすすめします。運用が定着したあとで、そこに不足を感じた場合に専用ツールを検討する順序が現実的です。
A. 全件を対象にする必要はありません。新規の投稿から新しい運用を適用し、過去分については再利用の可能性が高いものに絞って整えるのが効率的です。反応がよかった投稿、シリーズとして継続している企画、繰り返し使う商品素材が優先度の高い対象になります。
A. アカウントの種別によって利用できる音源の範囲が異なります。Instagramのライセンス音楽ライブラリは個人的・非商用での利用を想定したものであるため、企業アカウントでは、商用利用が可能なMeta Sound Collectionを活用するなど、利用の条件を確認したうえで選定する必要があります。そのうえで運用上の要点になるのが、どの投稿でどの音源を使ったかを記録に残すことです。投稿管理表に音源名の欄を1つ加えておくと、投稿を再利用する際や、別のフォーマットへ転用する際の確認がスムーズになります。個別の判断が必要な場合は、自社の法務・権利担当にご確認ください。
A. 確認のやり取りそのものを記録として残すことをおすすめします。誰に、いつ、どの投稿について確認し、どこまでの範囲で許諾を得たか。この4点が残っていれば、担当者が代わったあとでも判断できます。やり取りはダイレクトメッセージでおこなわれることが多く、担当者個人のアカウント内にしか残らない状態になりがちなため、投稿管理表への転記を運用に組み込んでおくと安全です。運用のルールそのものについては、自社の法務・権利担当と相談のうえで設計してください。
A. そのまま再投稿する場合は、その懸念があります。一方で、過去の投稿を素材として作り直す、別のフォーマットへ転用する、情報を更新して出し直すといった使い方であれば、受け手にとっては新しい情報として届きます。アセット管理が目指しているのは同じものを再投稿することではなく、作り直せる状態を保つことです。
この記事を書いた人

株式会社NAVICUS コンサルティングDiv.
コミュニティマネージャー/Instagramメディアマスター
富田 明日菜
X(旧:Twitter)・Instagramを中心に、多岐にわたる業界・業種の企業公式アカウント運用アドバイザリを担当。NAVICUSではInstagramメディアマスターとして、アルゴリズム理解に基づく運用改善、コンテンツ企画、制作ディレクション、KPI設計などをリード。
